旧耐震基準の不動産は売却できるのか?売れにくい理由と売れる方法を解説

不動産のこと

福田 善行

筆者 福田 善行

不動産キャリア17年

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旧耐震基準の不動産は売却できるのか?売れにくい理由と売れる方法を解説

相続などで古い住宅を所有していても、それを利用する予定がない場合、所有者としては売却を考えるわけです。
ただ古い住宅は売れにくいと言われ、その原因の1つに旧耐震基準であるといったものが挙げられます。
ではその旧耐震基準とはどういったもので、なぜ売れにくいのか、さらに売るための方法についても解説していきます。

不動産の売却時に知っておくべき旧耐震基準とは

不動産の売却時に知っておくべき旧耐震基準とは

地震はいきなり襲ってきて、その住人の財産を奪ったり生命に危険を及ぼしたりしますが、一定の規模の地震に耐えられる構造を持っていれば、その危険を回避できるわけです。
地震による危険を回避するために、建物に関しては建築基準法や施行令などで耐震基準が設けられていて、その基準は何度も改正されながら現在に至っています。
つまり古い基準であれば倒壊の危険性が高く、最新の基準を遵守した建物であれば、倒壊を免れる可能性が高いとされているわけです。
建築基準法は1950年に制定され、そのなかの耐震基準に関しては1971年と1981年、そして2000年に大幅な改正がおこなわれています。
この耐震基準とは地震に耐える構造の基準を言い、家屋を建てる際にはもっとも重要視されている基準で、現在は新耐震基準と旧耐震基準といった2つの基準が存在しています。
この2つの違いは1981年の5月31日を境とし、旧耐震基準とはその境以前に建築確認において適用されていたものです。
一方の新耐震基準はその境を超えて、つまり1981年6月1日以降からの建築確認で適用されている基準を言い、一般的に旧耐震・新耐震といった呼び方をしています。
またこの建築確認とは、その建物は地盤が建築基準法や各市町村の条例などに則ったものかどうかを、着工前に行政が審査し確認する作業を言います。
ではこの旧耐震基準がどのくらいの耐震性能を持っているのかと言えば、震度5強の揺れでも倒壊しないレベルとなっているのです。
また同じように揺れによる破損についても、補修すれば生活が可能とされる構造基準が設定されているのですが、以前であればこの基準でもとくに問題はなかったわけです。
しかし1995年に起きた阪神・淡路大震災での最大震度は震度7、2011年の東日本大震災でも震度7を記録するなど、近年の地震は揺れの規模が大きくなってきました。
実際、1968年の十勝沖地震後にRC構造の基準が強化され、1978年の宮城県沖地震後に旧耐震から新耐震へと建築基準法の改正があったわけです。
こうして大規模な地震に備えて耐震基準が新しくなったわけですが、強化された主な部分としては震度6強〜7の揺れでは建物が倒壊しない構造基準が設定されました。
もちろん、地盤や立地、揺れ方などにより同じ震度でも倒壊や破損が起こる恐れもありますが、それでも旧耐震に比べると新耐震のほうがリスクは少ないと言えます。

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旧耐震基準の不動産が売却しにくい理由

旧耐震基準の不動産が売却しにくい理由

旧耐震基準で建てられている不動産は売却が難しいと言われますが、その理由としてもちろん倒壊の心配があるといった点は大きいわけです。
ただ売れにくい理由としてはそれだけでなく、さまざまなものが考えられ、それらが複合的に絡み合って売れにくい要因を構成しているのです。
では倒壊の恐れ以外の理由についてみていきますが、まずは新耐震になったのが1981年で、旧耐震はそれ以前の建物であるといった点を抑えておく必要があります。
つまり旧耐震が適用されている建物は、いくら新しくても築40年は優に超えるものであるため、単に古いといった理由だけで売却が難しいわけです。
中古市場では、一般的に築25年を超えた物件は成約率が一気に下がる傾向にあり、これが築40年以上となれば、さらに売れにくくなるのも納得の理由です。
また古い物件はそのまま住むには難しいケースが多く、リフォームを施したり、いったん更地にしたりといった手間と費用がかかる点で人気がありません。
旧耐震の建物が売れにくい理由の2つ目は、住宅金融支援機構が定めた基準に適合していないためフラット35の利用ができないからです。
ただ鉄筋コンクリート造のマンションの場合は古い基準で建築されていても、構造計算を検証すればクリアできるケースもあります。
しかし現実はその検証には時間と費用がかかるため、初めからそういった物件を購入しようとする購入希望者はほぼいないと考えて良いでしょう。
またいくら中古物件であっても、購入希望者のほとんどは住宅ローンの利用を考えているわけですが、その際住宅ローン控除も利用できます。
しかし木造であれば築20年、鉄筋コンクリート造で築25年を超える物件には厳しい耐震基準が求められるため、ほとんどのケースで住宅ローン控除は適用されないのです。
同じような理由で、すまい給付金の受け取りも難しく、住宅ローン控除の問題も含め、あえて耐震性の低い住宅を購入しようとする方は少数派となります。
資金面で言えば、住宅の購入資金の一部を親などが出してくれるといった場合、一定の額までは贈与税が免除されますが、旧耐震基準の住宅にはこれが適用されにくくなります。
その理由は、やはり地震に対する安全性の問題があり、耐震改修工事などで対応する必要も出てくるため、その費用などを考えると敬遠気味になるのは仕方がありません。
住宅を購入する際は、火災保険のほかにも地震保険への加入をしたいわけですが、旧耐震基準の住宅は保険料が割高になるため、この点も売却しにくい理由となるわけです。

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旧耐震基準の不動産を売却する方法

旧耐震基準の不動産を売却する方法

購入希望者にとってはなにかと不利な条件ばかりの旧耐震基準の住宅ですが、それでも所有者としてはあきらめずに売却したいわけです。
ではどうすれば売れにくいこの物件を売却するいくつかの方法を解説します。
まず、売主がリフォーム費用を負担するといった方法があります。
通常はリフォームを施した後にその物件を売却するわけですが、このケースではそのリフォームを買主がおこない、そこにかかった費用を売主が負担するのです。
売主がおこなうリフォームが購入希望者の需要に合うとは限らないため、初めからリフォームプランをセットとして販売すれば買い手がつきやすくなるわけです。
またリフォームにたとえば500万円かかったとしても、査定額としては100〜200万円ほどしか上がらないため、資金がある場合はこの方法も試す価値があると言えます。
次の方法としては、耐震基準適合証明書の取得があり、これは耐震補強工事を伴うものですが、高値で売れるといったメリットがある方法です。
耐震基準適合証明書は、工事後に交通省指定の性能評価機関や建築士に依頼すれば取得でき、その診断費用は多くの自治体で補助がおこなわれています。
工事の費用は100〜200万円前後となりますが、耐震性が強化されるため住宅ローン控除などの利用が可能となり、購入希望者としては買いやすくなるわけです。
また最寄り駅やショッピングセンターに近いなど、周辺環境が良く利便性が高い立地にあれば、そのままの状態で売りに出しても比較的買い手は付きやすくなります。
ほかにも古家付き土地や更地として売却する方法もありますが、解体費用を上乗せすると売れにくくなる点と、再建築不可物件かどうかの確認には注意が必要です。

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まとめ

新築住宅を購入する際、耐震性を重視する購入希望者が増えていますが、中古物件においても同じ傾向にあります。
とくに旧耐震基準の物件は売れにくいとされますが、売れにくい理由を理解すればその対処法も見えてくるわけです。
売主としてできる限り売る努力をして、売り手と買い手双方にとって良い取引を目指してください。

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