相続の遺留分侵害額請求とは?旧法との違いや請求方法についてもご紹介

不動産のこと

福田 善行

筆者 福田 善行

不動産キャリア17年

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相続の遺留分侵害額請求とは?旧法との違いや請求方法についてもご紹介

親が亡くなるなどして相続が発生するとき、遺産の分け方について遺言で定められている場合があります。
それにより法定相続人の取り分が極めて少なくなるケースも珍しくはなく、これに対し相続人はその取り分の是正を請求できる権利を持つのです。
ではその権利である遺留分侵害額請求とはどういったものなのか、遺留分減殺請求権との違いや請求の方法についてご紹介します。

相続における遺留分侵害額請求とは何か

相続における遺留分侵害額請求とは何か

遺産の分配において、たとえば兄にくらべて少ない遺産しか受け取っていない、全財産が福祉施設に寄付されたなど、最低限の取り分も受け取れないケースがあります。
こういった場合は、民法の第1046条にある遺留分侵害額請求をおこなう必要がありますが、2019年6月30日までに生じた相続に関しては遺留分減殺請求と呼ばれます。
この遺留分侵害額請求についてですが、まずは遺留分とはどういったものかについて理解する必要があり、前提として遺言や贈与の不平等があるのです。
財産はすべて長男に相続と遺言にあれば、ほかの相続人には取り分がなく、また長男にほとんどを譲る場合にも受け取れる財産は少なくなるわけです。
しかし一定範囲内の相続人であれば遺言書の内容に関わらず受け取れる最低限度の遺産所得割合があり、これを遺留分といいます。
つまり遺留分侵害額請求権とは、侵害された遺留分を取り戻す請求ができる権利のことで、侵害した方へ自分が持つ遺留分の取り戻しを請求できるのです。
財産はすべて長男にという先の例でも、次男や長女などは長男に対してこの遺留分侵害額請求権の行使が認められ、最低限の遺留分を手にできるわけです。
またこの遺留分に関してはお金での精算が原則となるため、土地などの不動産であれば相続開始前の評価額を算出し、そこから請求額を計算する流れとなります。
ただこの遺留分の金額に相当する額のお金を用意できるのは少数派で、ほとんどの場合は現金での精算はできないのが現実です。
そういった場合は、請求した側と侵害した側双方の合意があれば不動産や株式などの現物による精算も認められていますが、譲渡所得税の対象となってしまいます。
次にこの遺留分侵害額請求ができる人についてですが、まずは配偶者、次に子どもや孫・ひ孫などの直系卑属、そして親・祖父母・曾祖父母などの直系卑属です。
逆に法定相続人であっても兄弟姉妹やその子である甥姪に対しての遺留分は認められていないため、その請求権も当然認められていません。
それでは、この遺留分の侵害はどういった場合に起こるのかですが、まずは遺言によってある特定の個人へ多額の財産が引き継がれたケースです。
たとえば亡父の愛人に財産のすべてを遺贈するとなっている場合や、NPO法人などに財産のすべてを寄付するとなっていた場合がこれに当てはまります。
次に生前贈与があり、例を挙げると唯一の財産である不動産を長男へ贈与していた場合や、長女に現金の贈与をおこなっていたため死亡時に財産がなくなっていた場合などです。
そして亡くなったときに効力が発揮される死因贈与があり、こちらも例としては亡父が死亡した際は、愛人にすべての財産を贈与するとなっているケースなどがあります。
こうした遺留分侵害額請求には期限があり、相続の開始および遺留分を侵害する贈与や遺贈を知ったときから1年とされ、それ以降は時効となり権利は消滅します。

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相続での遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求権の違いについて

相続での遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求権の違いについて

遺留分侵害額請求は2019年7月1日の改正民法の施行によって名称と内容の変更がおこなわれた法律で、それ以前は遺留分減殺請求権と呼ばれていました。
ではこの改正により遺留分減殺請求権との間にどのような違いがあるのかについてですが、まずは遺留分侵害の精算が金銭の支払いとなった点があります。
遺留分減殺請求権では原則として現物返還となっていて、遺留分請求をすると不動産や株式、あるいは現金など財産そのものが返還されていたわけです。
このとき現金であれば相続人の人数によって均等に分けられるのですが、不動産であった場合は分けられないため共有としての持分となっていました。
当然、遺留分権利者にとっても侵害者にとってもこの共有状態は望んでいないため、民法改正後は金銭での精算となったのです。
ただ遺贈を受けた側が請求された額の現金をすぐに用意できない場合は、その支払い期限に関しての猶予を裁判所に求められるようにもなりました。
次の違いは生前贈与の期間で、遺留分減殺請求ではその時期についてはすべてが対象となり、それにより数十年前のものについてのトラブルも発生しやすかったのです。
そこで生前贈与の期間を死亡前10年間と限定し、遺留分額の査定方法についてのトラブルを防ぎ、スムーズな請求ができるようになりました。
そしてもう1つの大きな違いですが、遺留分侵害額請求の適用は2019年7月1日以降の相続に対してのもの、それ以前のものは遺留分減殺請求権の適用となる点です。

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相続の際の遺留分侵害額請求の方法について

相続の際の遺留分侵害額請求の方法について

相続の際、実際に遺留分侵害額請求をおこなう方法としては、とりあえずは相続人同士で話し合うのが望ましく、これにより円満解決するのが理想です。
交渉がうまくいかない場合は、弁護士に相談するなどしてなるべく話し合いでの解決を目指し、そのうえで合意ができれば合意書を作成し、遺留分の支払いを受けます。
しかし話し合いで合意が得られないケースも多く、その場合は内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送付し、そのあと双方が話し合いの場に立って精算となります。
もし時効が近い場合は、話し合いよりも先に内容証明郵便を送付して、通知した事実を作っておけば時効を止められるため、時効が気になる方にはおすすめの方法です。
話し合いで合意が得られなかった場合や、この内容証明郵便での請求にも対応がなければ、家庭裁判所に対して遺留分侵害額の請求調停の申し立てをおこなうことになります。
裁判所と聞くと、裁判がおこなわれると思いがちですが、調停はあくまでも話し合いによる解決を導く場で、調停委員が当事者間での交渉の仲介をおこなってくれるのです。
つまり当事者同士が直接顔を合わせての話し合いはなく、調停委員をとおして双方の言い分を主張するため、冷静な対応が取りやすく双方の歩み寄りも期待できる方法と言えます。
ただ調停において、相手側に弁護士がついている場合は調停委員が相手側の言い分に説得されてしまう傾向があるため、こちらも弁護士に依頼するほうが良いでしょう。
この調停でも双方に歩み寄りや合意が見られない場合は、最終的に地方裁判所での遺留分侵害額請求訴訟の提起となってしまいます。
このとき請求する遺留分侵害額が140万円以下であれば簡易裁判所での訴訟となり、また140万円を超える場合でも家庭裁判所ではない点には注意が必要です。
訴訟は裁判を意味し、この裁判とは事実関係に問題や争いがある場合に、証拠を積み重ねて、その事実の有無を立証するもので判決による強制的な解決がおこなわれます。

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まとめ

遺言などで、ある個人が財産のすべてかそのほとんどを相続するとなっているようなケースも決して少なくはありません。
その遺言どおりとなれば、法定相続人であっても取り分はほぼなくなることになります。
これに対しては遺留分侵害額請求の権利を主張できますが、なるべくは話し合いでの解決が望ましいところです。

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