収益物件を相続する際の相続人の決め方とは?家賃は相続財産になる?

不動産のこと

福田 善行

筆者 福田 善行

不動産キャリア17年

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収益物件を相続する際の相続人の決め方とは?家賃は相続財産になる?

相続財産の中にアパートなどの収益物件がある場合は、通常の相続と異なる点も多いため、どのようにしたら良いのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、収益物件を相続する方に向けて、相続人の決め方や家賃が遺産になるのかといった疑問について解説します。
収益物件を相続後に売却する場合の注意点もご紹介しますので、収益物件を相続予定の方は、ぜひ参考にしてください。

収益物件を相続する際の相続人の決め方

収益物件を相続する際の相続人の決め方

収益物件を誰が相続するのかの決め方は、遺言書が残されているかどうかで異なります。
収益物件の相続人の決め方を、遺言書がある場合とない場合のケースに分けて解説します。

遺言書がある場合の決め方

被相続人(故人)が遺言書を残していて、収益物件の相続人を指定している場合は、遺言書のとおりに財産を相続します。
たとえば、「アパートは長男に相続させる」と遺言書に記載がある場合、収益物件は長男が引き継ぎます。
不動産を相続すると、不動産の名義変更である相続登記の手続きが必要です。
相続登記をした後は、他の相続人に承諾を得ることなく、自由に建て替えや売却ができるようになります。

遺言書がない場合の決め方

遺言書が残されていない場合は、相続人全員で遺産分割協議をおこなわなければなりません。
遺産分割協議とは、遺言書が残されていない場合や、遺言書とは異なる分割方法にする際に、相続人同士で遺産の分割方法を決める協議のことです。
遺産分割協議によって遺産の分割方法が決まったら、相続人全員の署名と実印が押印された遺産分割協議書を作成します。
相続人が決まるまで、収益物件は相続人全員の共有物です。
話がまとまらず遺産分割協議が長引く場合は、共有名義のまま相続登記や確定申告をおこなうことになるでしょう。

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収益物件の家賃は相続財産になる?

収益物件の家賃は相続財産になる?

収益物件の家賃が相続財産として扱われるかどうかは、相続開始前か開始後なのか、また、遺産分割成立後かによっても異なります。
ここでは、相続の段階によって異なる家賃の扱い方について解説します。

相続開始前に受け取った家賃

相続開始前に受け取っている家賃の場合は、複雑なことはなく通常の遺産と同様に相続財産として扱われます。
家賃収入は、オーナーの口座に振り込まれることが一般的なため、被相続人の財産かどうかを判断するのも難しくありません。
そのため、相続開始前であれば、家賃は被相続人の相続財産とみなされます。
遺言書などで分割方法に指示がない場合は、その他の財産と同様に、遺産分割協議で分割方法について話し合うことが必要です。

相続開始後から遺産分割協議成立前に受け取った家賃

相続が発生してから遺産分割協議で分割方法が決まるまでに受け取る家賃については、以前からトラブルの原因になるケースがありました。
遺産分割協議成立前の家賃を相続人全員の共有財産とみなすか、収益物件を相続する方の財産として扱うかが論点となっていたのです。
しかし2005年9月8日の最高裁判決で、相続する方の財産ではなく、相続人全員の財産とみなす判決が下されました。
相続開始から遺産分割協議成立前に発生した家賃や地代、銀行の利子などに関しては、原則として法定相続割合に応じて各相続人が分け合うことになります。
なお、収益物件を所有していると生じる管理費や修繕費用などの債務に対しても、法定相続割合に応じて各相続人が負担します。

遺産分割協議成立後に受け取った家賃

遺産分割協議成立後に受け取った家賃に関しては、相続財産に含まれず、収益物件を相続する方の不動産所得になります。
管理費や修繕費用などの支払いに関しても、今後は収益物件の相続人が負担していきます。
収益物件で不動産所得を得ると、確定申告が必要です。
収益物件を相続人が共有して所有する場合は、各自がそれぞれ得た不動産所得の確定申告をおこないます。
また、不動産を相続した場合は、不動産の名義変更である相続登記をおこなわなければなりません。
相続登記は2024年4月から義務化され、手続きを怠ると10万円以下の過料が科されるおそれがあります。
遺産分割協議により収益物件を相続することが決まったら、速やかに相続登記をおこないましょう。

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相続した収益物件を売却する際の注意点

相続した収益物件を売却する際の注意点

収益物件を所有していれば、家賃収入を得られるメリットがありますが、その一方で、空室リスクや修繕費用の負担など、さまざまなリスクが伴います。
そのため、収益物件を相続しても運営は続けずに、売却を検討する方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、収益物件の売却を検討する際に知っておきたい注意点についてご紹介します。

取得費加算の特例を使えるか確認する

不動産を売却して利益が生じた場合は、売却した翌年に確定申告をして譲渡所得税を支払います。
譲渡所得税は、売却価格から不動産を取得したときの取得費と、売却時に支払った譲渡費用を差し引いても利益が出る場合に支払う税金です。
仲介手数料や測量費など不動産の購入や売却時にかかった費用を、取得費・譲渡費用に加算できるため、売却益を減らすためにも、加算できる費用をもれなく計上することが大切です。
収益物件を売却した場合も、次のような条件に該当すれば、相続税額の一部を取得費に加算できます。

●不動産を遺贈または相続によって取得している
●相続した方に相続税が課されている
●相続が発生した翌日から3年10か月までに売却している


そもそも、相続税の課税対象者でない方は、取得費加算の特例が利用できません。
また、相続税の課税対象者であっても、期限内に売却をする必要があります。
相続税を納付した収益物件を売却する場合は、取得費加算の特例が利用できるか確認しておきましょう。

売却のタイミングに注意する

収益物件を売却する際は、売却するタイミングに注意することも必要です。
近隣に新駅ができる、ショッピングモールができるなど、新たな建設予定があれば、今後益々地価が上昇する可能性があります。
経済の動向や周辺地域の状況にも配慮し、不動産会社と相談しながら売却するタイミングを検討しましょう。
また、不動産は所有している期間によって譲渡所得税の税率が異なり、所有期間が長いほど課税額も少なくなります。

●短期譲渡所得税(所有期間が5年以下):税率39.63%
●長期譲渡所得税(所有期間が5年超):税率20.315%


このように、所有期間が5年を超えるかどうかで譲渡所得税率が変わるため、あと数か月で5年を超えるような場合は、5年を超えるタイミングで売却する方法もあります。
所有期間は前の所有者が所有していた期間も合算できるので、譲渡所得税の課税対象になる場合は、売却のタイミングにも注意してみましょう。

立ち退きをする場合の注意点

収益物件の売却で注意したいのが、買主が入居者の立ち退きを希望しているケースです。
入居者に立ち退きを依頼する場合は、少なくても半年から1年半ほど前に通知する必要があります。
ただし、普通賃貸借契約で契約している場合は、入居者の立場が守られるため、オーナーの都合で退去を迫ることができません。
そのため、入居者に立ち退きを依頼する場合は、理解を得られるよう余裕を持って進めていくことが必要です。

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まとめ

収益物件を相続し遺言書がない場合の相続人の決め方は、相続人全員でおこなう遺産分割協議です。
家賃を相続財産として扱うかどうかは、相続の段階によっても異なり、相続人が決まるまでは相続財産として扱われます。
相続した収益物件を売却する場合は、取得費に加算できる費用や売却のタイミングにも注意しましょう。

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